文系だって統計がしたい

文系大学生を想定して統計学の解説をします。

【数学的準備】和の記号Σ

和の記号\sum

統計学では多数のデータを扱います。

そのため、多くの数を足し合わせたりするような数式が出現し、煩雑になることがあります。

そこで書く手間を減らしたり計算を楽にするために、和の記号\sumというものを定義します。見た目はイカツイですが、ただの略記だと思うとよいです。

 

定義 和の記号\sum
i番目のデータをx_iと表すとき、1番目からn番目までn個のデータを足した和を
\displaystyle\sum_{i=1}^nx_i
と表す。すなわち
\displaystyle\sum_{i=1}^nx_i:=x_1+x_2+\cdots+x_n

 

つまりこの\displaystyle\sum_{i=1}^nは、足し合わせたい対象の左側に置くことでその対象を1番目からn番目まで順番に足すように命令する、という記号です。 この定義により、次のことがわかります。

 

定理 \sumの性質
(1) 定数cに対して\displaystyle\sum_{i=1}^nc=nc
(2) 定数cに対して\displaystyle\sum_{i=1}^ncx_i=c\displaystyle\sum_{i=1}^nx_i
(3) \displaystyle\sum_{i=1}^n(x_i+y_i)=\displaystyle\sum_{i=1}^nx_i+\displaystyle\sum_{i=1}^ny_i

証明

(1) ciを含まない式なので、これはiの値によらず常にcである。よって1番目からn番目までずっとcということなので

\displaystyle\sum_{i=1}^nc=c+c+\cdots+c (n個の和)=nc

(2) 和の記号を書き下して

\displaystyle\sum_{i=1}^ncx_i=cx_1+cx_2+\cdots+cx_n
=c(x_1+x_2+\cdots+x_n)=c\displaystyle\sum_{i=1}^nx_i

(3) 和の記号を書き下して

\displaystyle\sum_{i=1}^n(x_i+y_i)=(x_1+y_1)+(x_2+y_2)+\cdots+(x_n+y_n)

これは有限個の和なので、足し合わせる順番を変えても総和は変わらないから、まず先にxを、その後にyを足し合わせて

=(x_1+x_2+\cdots+x_n)+(y_1+y_2+\cdots+y_n)
=\displaystyle\sum_{i=1}^nx_i+\displaystyle\sum_{i=1}^ny_i

\Box

ただし、

\displaystyle\sum_{i=1}^n{x_i}^2\neq{\displaystyle\left(\displaystyle\sum_{i=1}^nx_i\right)}^2

であることに注意しましょう。たとえば

\displaystyle\sum_{i=1}^2{x_i}^2={x_1}^2+{x_2}^2

ですが、

{\displaystyle\left(\displaystyle\sum_{i=1}^2x_i\right)}^2={(x_1+x_2)}^2
={x_1}^2+2x_1x_2+{x_2}^2

となり、x_1x_2=0でない限りは等号が成立しません。

 

またこの定理により、\sum計算の線形性という重要な性質が成り立つことがわかります。

 

系 \sumの線形性

定数a,bに対し

\displaystyle\sum_{i=1}^n(ax_i+by_i)=a\displaystyle\sum_{i=1}^nx_i+b\displaystyle\sum_{i=1}^ny_i

証明

\sumの性質(2)(3)をまとめた表記であるので直ちに従う。

\Box

 この線形性により直感的で簡単に計算ができるようになります。

 

今後\sumを頻繁に使うので上の性質は覚えておいてください。